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強盗殺人事件において、警察官によるビデオ撮影が問われた判例を解説

日々発生する事件に対し、捜査機関の捜査方法が法律で問われることが多くあります。

 

今回はそんな捜査方法が問われた事件の中から、警察官によるビデオ撮影が違法なのか、はたまた適法なのかが問われた事件を解説しましょう。

 

そもそも、人の容貌などを承諾なしに、みだりに撮影されない自由を憲法13条で保障されています。

 

そのため、警察といえどもむやみに撮影することはできないものなのです。

 

今回解説する判例の事件では、この警察によるビデオ撮影について問われただけでなく、捜査機関が公道上のごみ集積所に不要物として排出されたごみを領置することの適法性も問われており、これも併せて解説していきます。

 

この事件は、Aさんが行方不明になり、Aさんの家族から「捜索願」が出されたことからはじまります。

 

捜索願により、Aさんの捜索を開始した警察は、Aさんが行方不明になった後に、Aさんの口座から多額の現金が引き出され、その時の防犯カメラにはAさんではない人物が写っていました。

 

さらに、Aさんの自宅からは多量の血痕が発見されたことから、強盗殺人の可能性があることが判明します。

 

 

 

その後の捜査で、Bさんが被疑者として浮上します。

 

警察は、捜査上浮上したBさんと、Aさんの現金を引き出す際の防犯カメラに写っていた人物が同一人物であるのか判断するため、Bさんを撮影することとします。

 

そして、Bさんの自宅近くで捜査車両を止め、捜査車両の中から公道上を歩いているBさんを撮影し、更に付近で借りたマンションの部屋からも、公道上を歩いているBさんをビデオカメラで撮影しました。

 

更に警察は、防犯カメラに写っていた人物がはめている腕時計と、Bさんがはめている腕時計が同一かを確認するため、Bさんがパチンコ店内で遊技しているパチンコ店の店長に依頼して、店内の防犯カメラでBさんを撮影したほか、警察官が小型カメラを用いて、店内のBさんを撮影します。

 

また、警察は、Bさんが自宅付近の公道上にあるごみ集積所に出したごみ袋を回収し、そのごみ袋の中身を警察署内において確認し、防犯カメラに写っていた人物が着用していた腕時計と類似する腕時計を領置したほか、防犯カメラに写っていた人物が着用していたものと類似するダウンベストも領置しました。

 

これらの行為が、後の裁判で弁護側と争うことになったのです。

 

 

 

まず、警察がビデオ撮影した画像が、防犯カメラに写っていた人物とBさんとの同一性を専門家が判断する際の資料とされ、その専門家による鑑定書が作成されました。

 

そして、領置したダウンベストと腕時計も証拠資料として第一審で取り調べられました。

 

そこで弁護側は、警察による撮影は十分な嫌疑がないにもかかわらず、Bさんのプライバシーを侵害して行われた違法な捜査手続きであると主張します。

 

また、腕時計とダウンベストの領置は令状なく占有を取得し、プライバシーを侵害した違法な捜査手続きであるから、これらの鑑定書等には証拠能力がないのに、証拠として採用した第一審の訴訟手続きを認めた判断は違法であると主張しました。

 

裁判はすすみ、ついに最高裁において結論が出されました。

 

まず最初に、捜査機関においてBさんが犯人である疑いを持つ合理的な理由が存在していたものと認められました。

 

そのうえで、捜査機関によるビデオ撮影は、強盗殺人事件の捜査に関し、防犯ビデオに写っていた人物の容貌、体形等とBさんの容貌、体形等との同一性の有無という、犯人特定のための重要な判断に必要な証拠資料を入手するため、これに必要な限度において公道上を歩いているBさんの容貌等を撮影したものであり、いずれも、通常、人が他人から容貌等を観察されること自体は受忍せざる得ない場所におけるものである。

 

以上からすれば、これらのビデオ撮影は、捜査目的を達成するため、必要な範囲において、かつ、相当な方法によって行われたものといえ、捜査活動として適法なものというべきであるとされました。

 

ダウンベストや腕時計等の領置手続きについてみると、Bさんはこれらを入れたごみ袋を不要物として公道上のごみ集積所に排出し、その占有を放棄していたものであって、排出されたごみについては、通常、そのまま収集されて他人にその内容が見られるこはないという期待があるとしても、捜査の必要がある場合には、刑訴法221条により、これを遺留物として領置することができるというべきである。

 

 

 

また、市区町村がその処理のためにこれを収集することが予定されているからといっても、それは廃棄物の適正な処理のためのものであるから、これを遺留物として領置することが妨げられるものではない。

 

このようにして、これらの行為は適法とされました。

 

この判決から被疑者の容貌等の撮影において次の3つの要件があることが分かります。

 

1 捜査目的を達成するための撮影であること

2 必要な範囲における撮影であること

3 相当な方法によって行われる撮影であること

 

この3つの要件が必要ということですね。

 

 

 

今回の事件では、最高裁として初めて捜査のための人の容貌等のビデオ撮影の要件を示したとされ、重要な判例とされています。

 

最初に説明しましたが、人はみだりに容貌等を撮影されない権利を憲法13条で保障されていますが、 ビデオ撮影については、それが承諾なしになされるのであれば、憲法13条の保証する利益と、秘匿捜査をする利益とが正面から抵触しますから、これを調整するルールが最高裁により明示されたこの判決は注目されています。

 

なお、この判決文の最後には、被告人(Bさん)が本件強盗殺人、窃盗、窃盗未遂の罪を犯したとの原判決の事実認定に疑いをいれる余地はない。

 

よって裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定するとしてBさんの強盗殺人、窃盗、窃盗未遂の罪が確定している。

 

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